01/水義製陶所
水野 恒実さん
伝統技法のコラボレーションでオリジナリティを演出
会社勤めを経て、専門学校で陶磁器の技術を学んだ水野さん。柔軟なオーダー対応が自慢の窯元・水義製陶所の四代目として活躍しています。
瀬戸の伝統的な2つの技法を用いた製品がメイン。銅板転写紙を使用した「銅板転写」と、色付けの釉薬をひとつの器の中で2種以上使い分ける「釉薬の掛け分け」で、お客さんの要望を最大限叶える器づくりを行っています。
レトロモダンな柄やポップでカラフルな釉薬を使用したものなどオリジナル製品も生み出す水野さん。普段は目の粗い荒土という土が原料ですが、今後は粘土質の赤土を使って新たな作品づくりに取り組んでいきたいと話します。「瀬戸の伝統を生かしつつ、新しい技法やデザインにもチャレンジしていきたいですね」。
02/三好屋 老泉
老泉 翔太さん
全国和菓子協会による「優秀和菓子職」にも認定!
広島で修行を積んだのち、三好屋老泉の三代目として活躍。「〝菓子は人なり〞という言葉があるように、和菓子はツクリテの心が表れるもの。日々、真摯に和菓子と向き合っています」。得意とするのは写実的でハッキリとしたテイスト。心とオリジナリティをプラスすることで、老泉さんならではの和菓子に仕上げています。
和菓子には四季が大切。季節に寄り添ったものを作ることで、食べる人に「今年もこの季節が来たのだな」と知らせる役目があるそう。目指しているのは、若い世代に和菓子への興味を持ってもらうこと。そのためにも、〝顔の見える和菓子屋〞を意識しています。若い職人である老泉さんが表に立つことで、若い世代にも親しみやすい印象を与えているようです。
最近は瀬戸のツクリテ同士がつながってまちを盛り上げていこうという活力を感じているという老泉さん。「地元・瀬戸はツクリテとしても好きなまちです」
03/瀬戸切子作家
左口 学さん
切子では珍しい曲線文様と色彩のグラデーション
薩摩切子が有名な鹿児島に住んでいた祖父母の影響で、小さい頃から切子や吹きガラスの工場をよく見学していたという左口さん。大学を卒業して作家活動を経たのち、瀬戸市新世紀工芸館の研修生として瀬戸へ。現在は独立し、形成から削りまで一貫して行なっています。
形成と削りの技術をともに磨きながら、切子としての新たな挑戦にも意欲的。たとえば色によって硬さが異なるガラスは、異なる色を組み合わせて形を整えるのが難しいのですが、試行錯誤により2〜3色のグラデーションを実現。多彩なガラスが光を受けて、優美な輝きを放ちます。さらに、左右対称に滑らかに削ることが難しい曲線文様を施して生まれる器やコップ。唯一無二の作品がずらりと集まります。
年に20回以上のイベント出展のたび30〜40種類は新作を手がけているとのこと。いつ訪れても新しい作品、新たな切子の技術を目の当たりにできます。
04/陶芸家
村井 陽子さん
日常に溶けこむゆるさ満点の陶製ミニチュア動物
名古屋での制作活動を経て、自分の窯を構えるために瀬戸に移住。猫や白くまなど愛らしい動物の箸置きやオブジェを制作し、東京・名古屋のカフェやギャラリーなどで展示しています。大の動物好きだという村井さん。動物の仕草や表情を研究するため、図鑑や動画を見て作品に生かしています。手でこねて形を作る〝手びねり〞で、手や足の動きの細かなニュアンスを表現。同じ動物でも1つ1つ表情に違いがあるのが魅力。
「思わず手にしたくなる親しみやすさや、愛着が感じられるものを作りたい」と村井さん。手のひらサイズの作品たちは、インテリアのどんな場所に飾っても素朴な愛らしさをもたらしてくれます。
「古くからやきもの文化が根付く瀬戸は、市内に土屋さんや道具屋さんがあるので便利。同年代の作家同士の交流も深く、ツクリテの悩みだけでなく子育ての悩みも共有できるところも生活のしやすさにつながっています」。
05/染付・陶芸家
森本 静香さん
呉須に金属を混ぜて染付に新たな色彩を
白い陶磁器に青の濃淡のみで繊細な模様を描かれることが多い瀬戸染付。森本さんが描くのは青だけでなく紫や緑など独自の色彩を加えた新しいスタイル。本来は呉須という原料のみで描くところを、銅や鉄を混ぜることで新たな色彩を生み出しました。「どんな原料を混ぜるとどんな色になるのか、色彩の面白さに夢中になって何度も実験を繰り返し、今使っている色に辿り着きました」。
得意とするのは、植物や花などの細やかな描写。青一色だけでは描ききれなかった水紋や睡蓮、藤の花など、色彩が増えたことで表現できるモチーフも多くなったと言います。
芸大大学院卒業後、陶芸を続ける環境が揃っている瀬戸へ。染付工芸館で研修生として3年経験を積みつつ作品を展示してきました。今なお、新たな色彩が生み出せないか実験中。瀬戸染付に今後どのように美しい色彩が増えていくのか楽しみです。
06/エム・エム・ヨシハシ
吉橋 賢一さん
型屋ならではの持ち味で多彩なデザインを展開
祖父の代から型屋。東京でパタンナーの勉強をしていた賢一さんは、瀬戸に戻ってデザイナーとコラボし前衛的なデザインの自社ブランド「彫付」「AND C」を立ち上げました。「自社ではデザインから型作りまでを行い、焼くのは窯屋さん。瀬戸には200軒以上窯屋があり、陶器や磁器、白やカラーなどそれぞれに得意分野があるので、作りたいものに合わせて焼いてもらっています」。
型屋ならではのデザインの豊富さが魅力。人気のあるニット編みデザインの湯呑を夏に使ってもらうためにと、籐のデザインが誕生。色ではなく型でバリエーションを増やします。
瀬戸は土が採れるし、釉薬、型、窯屋それぞれに職人がいて、やきものづくりに適した場所。ここを拠点とし、デザイナー、ツクリテ、ツカイテのつなぎ役をしたいと吉橋さんはいう。ツカイテとの接点のため、通販機能のあるウェブサイトも運営しています。